「ライムライト」と「ゼロ・グラビティ」

3D映画「ゼロ・グラビティ」を見た後ずっとひっかかっていて、その後しばらくして気づいたのだが、「ゼロ・グラビティ」の話型はチャップリンの映画「ライムライト」と同じだなあ、ということ。

「ライムライト」 (映画)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

ゼロ・グラビティ
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/

どちらも、「生きることに疲れてしまった女性を、ユーモラスな年上の男性が助け、その男性は亡くなるが、女性のほうは希望を見出して生還(あるいは成功)する」というストーリー。

ゼロ・グラビティ」のほうは、映像技術とかアイデアはすごくいいんだけど、ストーリーに少しあちこちツッコミどころがあったので不満はあるのだけど、「ライムライト」の完成度の高いストーリーであれができていたらなあ、と思う。
ゼロ・グラビティ」の不満点はまた書くとして。

vineで、まさに同じことを言っているなあ、と思える象徴的なシーンを掲載。ほんとは著作権的にはよくないことなんだろうけど…。
https://vine.co/v/Mz2uOPFiaV1


「ライムライト」、長いけど、ほんとにいい映画です。
DVD置いてある図書館とかにはけっこうあるので、無料で見ることもできるかも。

「ホテルの食品偽装」と「佐村河内守」問題と「バンクシー」

最近の
■「ホテルの食品偽装」
全国のホテルが慌てだした「食品偽装」問題 - NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2138319688340172101
■「佐村河内守」問題
佐村河内守氏が記者会見 「新垣隆さんを名誉毀損で訴えます」
http://huff.to/1g2BoPM

が同じ現象に思えてならない。
どちらにも言えることとしては、「偽装した人」と「まんまと偽装にノッてしまった客」がいて、それについての論争とかキレイ事がネット上で渦巻いている、という状況。

人々のスタンスとしては
・騙された! 騙してた奴らが許せない!
・騙された奴らざまぁwww
・まあ見抜けない奴らがいいカモになった感じだね。
・ほんとにわかってて褒めてたの?
・内容のクオリティは悪くないんだから素直に褒めたらいいじゃん。
というような感じ。

論点としては
○「嘘をついていたことを許せるかどうか」
○「お客は一体『何』を褒めていたのか?」
の2つなのだと思う。

僕が気になるのはやっぱり二番目のほう。
つまり「作っていたホテルのシェフの腕前」と「作っていた新垣隆氏」の腕前や作品に対してはあまりに「論争」が起きていないよなあ、ということ。
まあ僕自身食べ物は、高級ホテルなんて縁がないし、味覚も「なんでもおいしい」人間だし、クラシックや現代音楽はよくわからんので、「んーよくわからん。本人がいいと思ってるんならそれでいいんじゃないの?」って感じ。

で思うのは。
バンクシー」という名前の覆面芸術家、とその界隈を描いた映画、「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」を連想する。
wikipedia バンクシー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC
映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/exitthrough/

以下はこの映画を評した解説動画たち。
宇多丸が映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を語る:
http://youtu.be/M8DSkHzYK_k
町山智浩が映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を語る:
http://youtu.be/lX5pfcl5Va8
コトブキツカサの「先週あれ観たよ編」:イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ:
http://youtu.be/A4t0CpLWAtI

ちなみにこんなエピソードも。
バンクシーが自らの絵をニューヨークの路上で1枚60ドル(約6千円)で販売するというゲリラセールを開催。はたして何枚売れたでしょうか? 」
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52143016.html
CBCNET:LOG ≫ 有名過ぎるBANKSY、賛否両論のアーティスト・レジデンシー in ニューヨーク 進行中 」
http://www.cbc-net.com/log/?p=7427

はじめは権威を揶揄するスタンスで表現をしていたアーティストが、自分自身の作品が評価され「権威」化してしまい、そうなると今度は本人が「本当に区別がついてて褒めてるの?」と逆にファンを試し始めてる、という。
佐村河内氏もこれができたらかっこよかったんだが…w

やっぱり「けっこう少なくない数の人々が、ものの良し悪しをわからずに褒めたりけなしている」ってことがわかる気がする。

そういう意味では「アイドルのCDを買うときのアイドルファンはCDに収録されている曲なんか聴いてない」ってことに気づいた秋元康のAKB商法もまさにこれだと思うし、すごく「うまい」と思う。
「CDは株券ではない」って本があったけど、まさに「アイドルファンはCDを株券だと思って買っている」って事実に気づいちゃったんだよなあ。おそらくこれは「アニメファンはアニメグッズを株券だと思って買っている」と置き換えても同じことが通用しちゃうんだろうけど。
ここ二年くらいのCD売上チャートの上位がすべて惨憺たるものだったりするのを見ると、まさに「音楽を聴いてない人がCDを買う数のほうが多い」という悲しい現状を象徴していると思う。
(まあただ単にDL購入が増えてディスクを購入しなくなったのもあるけど…)
「CDは株券ではない」 菊地 成孔
http://www.amazon.co.jp/dp/4835615638/


というか、
裸の王様
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%B8%E3%81%AE%E7%8E%8B%E6%A7%98
がまさにそうじゃん! とも思ったり。
デザイナーの嘘に騙されてしまう王様の話なんだけど、「裸の王様」の話だと「大衆は王様を見て口々に裸だと言った」というような展開なんだけれど、いま社会で起きている問題は、このストーリーよりこじれていて、言うならば「裸だと思ったけれど、王様が言うのならそれが正しいのだろう」と思って口々に褒め出した…というようなところじゃないだろうか。このストーリーの「愚かな王様」に、大衆のほうがなりかけてる感じ。
アンデルセン物語 第37話 裸の王様:
http://youtu.be/fH3iR6alp9s

やっぱり本当の加害者は「わかってないのに褒めだす」人々なのではないか? と思ってしまう。
だからこそ、それを見込んだ「供給者」たちが次々と登場してしまう、という「目的と手段の逆転」が起きてしまうのだと思う。

「観客のほうが勝手に教祖を作りだしてしまう」ということで言えば、眉村卓という人の書いた短編「通りすぎた奴」を思い出す。これは、「教祖」の方にはまったく意図がないのに、聴衆が勝手にその人を崇めてしまう、というストーリーだけれど。
「通りすぎた奴」眉村卓
http://www.amazon.co.jp/dp/4041357268/

で、Aphex Twinっていうミュージシャンも思い出してしまう。
この人も「お客からの評価をあざ笑ってる」感がすごい。
匿名で音源を出したり、「26 Mixes for Cash」っていうリミックス曲を集めたアルバムを出した時、
「世界中にあるゴミみたいな曲を少しマシにしてやるためにリミックスを引き受けたんだ」みたいな毒を吐いてたりする。
"Aphex Twin"
http://ameblo.jp/nohiroa/entry-10644072685.html
「●多くの楽曲のリミックスを行っているが、嫌いな曲しか引き受けない。クソみたいな曲を少しでも減らしたいからというのがその理由(日本だと「バクチク」リチャード評によれば「最悪」)」

結局のところThe TussAphex Twinなのか - まとめ
http://www.spotlight-jp.com/matsutake/mt/archives/2009/04/the_tuss_aphex_twin.html
26 Mixes for Cash
http://www.amazon.co.jp/dp/B000088EGP/
Aphex Twin - 26 Mixes For Cash [CD2]:
http://youtu.be/1ooGnZfswrU

ってなことを踏まえて(予防線を張るためにw)言うと、僕はAphex Twinよくわからないんだよねえ。
皆が褒めるからこそあえて言いたい。
もちろんこの曲は好きなんだけど。
Girl / Boy Song
http://youtu.be/YCSrMEsaNAM
この曲はフィギュアスケートに使われたらいいのになあ、と思う。
アンビエントワークス2も好きなんだけどね。
Aphex Twin - Selected Ambient Works Volume II (1994, FLAC, HD):
http://youtu.be/bii-CXEGviU

Drukqsってアルバムも一曲おきに好きだった記憶はあるけど…。
Drukqs - vordhosbn:
http://youtu.be/-iEl7OKrLGI


だからもっと、「うーんよくわからない」とか「個人的にはこれ好きかな」をきちんと言うべきなんだと思う。
決して誰かに合わせるのではなくて。

「豊作のキャベツ」と「売れないCD」について

音楽CDが売れなくなった、とかの問題って、農業でキャベツが豊作すぎて(相場がが崩壊してしまうので)ドーザーでつぶしてる、って話と似てるかも。
「相場」の問題でもあるけど、「需要」の間口がようつべなどの安い素材で満腹になってしまうんだよなあ。
つまり、ドーザーでつぶされるはずのキャベツがそのまま供給されて、もうお腹いっぱいになっちゃってる状態。「もうタダでもいらない」状況になるし、なによりもうキャベツを食べ過ぎてる状態。
キャベツが嫌いになったのではなくて、安い(あるいはタダの)キャベツでお腹いっぱいになった状態、とでも言えばいいか。

あと「お前ら今までキャベツいっぱい潰してきてたんじゃん」っていう前科に対する非難。
「もう古いから売れないよ」とか「君の路線じゃ売れない」と言って潰されてきた、古かったり無名だったりするキャベツたちがニコニコ動画やようつべで再評価されて、それにより卸売市場の「正規品」が売れなくなる、ってのはある意味自然なことなのかも。ほんとは豊作なのに供給を減らしてきたわけで。

https://twitter.com/yomi_nuxx/status/330188332132876289

https://twitter.com/yomi_nuxx/status/330188685456838656

https://twitter.com/yomi_nuxx/status/330189299834298368

斜面に作られる水平面について

世の中が斜面だとして、その斜面に不安を抱く人たちが、そこに水平面を作った。その水平面は快適であったが、そのまわりには段差ができた。その階段こそが階層とか差別とかの温床であり、動きにくい階段の定着だったんじゃないか。斜面は斜面のままが一番快適であると思う。


https://twitter.com/yomi_nuxx/statuses/288534706201436161

「何かを所有したいと思う願望は、時間を経るとホコリだらけになる」

土地の登記簿謄本とかを見たり、ホコリだらけのタンスとその中身を捨てる作業をしながら、そう思った。

僕のハードディスクの中身も、いつか誰かが見たらそう思うんだろうか?
.raファイルとか原始的なhtmlファイルなどを見て。